不道徳教育講座
三島由紀夫が井原西鶴の『本朝二十不孝』にならって書いたユーモラスな逆説的道徳のすすめ。ウソ、いじめ、忘恩などの悪徳を奨励し、内的欲求を素直に表現することで、近代文明社会が失った健全な精神を取り戻そうとする。そして「自分の内にある原始本能を享楽すること」こそ文明人の最大の楽しみと説く。
人間が本来持つ悪への志向を抑圧するのではなく、陽性の行為に表すことによって悪が沈静化するという主張は人間心理を鋭く見抜いており、既存の常識への抵抗を使命とする芸術家の基本姿勢でもある。結果として、まじめな道徳教育に帰結している本書は、逆説のおもしろみや機知に富んだ文章、作家の素顔をのぞかせるエピソードなどのくすぐりが満載でおもしろおかしく読むことのできる箴言集となっている。1958年の「週刊明星」に連載されたものだが、世界の中の日本を問う三島の国際人的意識は今日的であり、現代の社会を見通す鋭い眼差しにも驚かされる。(林ゆき)
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頭のいい人の丁寧に書いた不道徳教育講座 |
僕の読んだ最初の三島由起夫の本です。不道徳教育講座っていうあくまでもちょっと胡散臭くて、軽薄そうな題ですが、この本は決して馬鹿が勝手に気取って書いたありふれた偽悪的な本ではないのです。これは、すごく頭のいい人によって丁寧に書かれた文章の魅力がどんなものであるかを見せてくれるすばらしい味のある作品です。が、そうは言っても、エーリッヒ・フロムの書いた名作「The Art of Loving」みたいな本とは違って、題から醸し出されるニュアンスが読者になんとなく期待させる魔法的であり実用的でありそうなその何かを裏切ったりはしません。これこそが本当にこの本の読書を楽しくさせるところでありますが、この本の題は正にその内容をうまく代表しているもので、三島さんは、へたに悪を使って何か崇高たるものをいっているふりもしなければ、言おうともしないし、もの正直にいろいろなことについて道徳という観念に捕らわれることのない考え方の持ち主だけが考えられることをユーモラスに語っています。
この本を読んで、僕は新しい感覚を得た気がしてすごく嬉しかったです。本当にいろいろなことをこの本を読んで習いました。そして新たに教えてもらった分だけ、また別に新しい疑問が心のなかにできました。こんな本はそれほどおおくあるものではありません。そして文章の完成度も凄く高いのです。軽い主題を洒落た文章で気軽く書くのにもこんなに、賢くて、創造的な展開をみせて、文の密度と構造の素的さを維持できる三島由起夫さんは、なんだかんだ言ってもその文才と頭の良さは認めざるを得ない人物なのでしょう。
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天才の遺した「軽口」から教示を受けよう |
高尚にして濃厚、秀逸にして優雅、洗練と収斂、焦燥と耽美。どこをどう切っても圧倒的な文化人にしてスポーツマン、国際的劇作家にして俳優。名士の血統であり天才的作家である三島由紀夫氏は、その短いと言える終生をストイックなまでに創作に打ち込んだ、と思っていたらとんでもない。
軽妙にして洒脱、博識にして能弁、慇懃にして辛辣、だが強引で軽薄。
今も世界中の愛書家、演劇人から畏敬をもって読み継がれる文士:三島由紀夫氏のもうひとつの顔がある。驚くほど濃密で能動的な生涯を裏付ける知識と見識に裏打ちされる毒舌が、横っ腹の痙攣を誘う。
「実はこんなこと考えて生きてました」を遺す、貴重な、現代でいうところのエッセイ集。
全く、なんということだ! 『人に迷惑をかけて死ぬべし』と貴方が言ったのか。
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第二の三島 |
道徳、不道徳という区別はそもそも国や集団が成り立つためのルールのようなもので、それはいつでも移り変わりうる儚いものかもしれません。
そのことを表したいがために純文学的な小説を書いた三島氏とは違う、害の無い皮肉を交えたセンスあふれる表現で読者を楽しませてくれます。
そして時折サルトルを「先生」と呼ぶ三島氏の持つ実存主義者的意見も多く発見できます。
個人的に「はい、おやすみなさい。」の終わり方は結構気に入りました。
そして巻末の奥野健男氏の解説にボディービルディングに精を出したり、宮殿のような家に住んだり、裸体で写真のモデルになったりするとっぴょうしのない行動をする”私”生活とあの「金閣寺」や「音楽」を書いた作家としての”公”生活との区分をしていたとの話がありましたが、市ヶ谷で腹を切った三島はいったいどちらの三島だったのでしょうか?
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面白くて、洒落てて、読み易い! |
三島由紀夫って、こんなに気さくな人だったの?
気取りの無い、お茶目な屁理屈。屁理屈でありながら、さらりとしていて、押し付けがましさが無い。読んでいて、思わず、「ぷっ!」と吹きだすこともしばしば。
特に気に入ったのが、「泥棒の効用について」「うんとお節介を焼くべし」「できるだけ己惚れよ」「「殺っちゃえ」と叫ぶべし」「スープは音を立てて吸うべし」「人の不幸を喜ぶべし」。
若干、後半トーンダウンしてしまったように思えるのが残念だが、それは、より刺激を求め過ぎたせいだろうか。
40年近くも経つというのに、古さを全く感じさせないのも凄い。
しかし、こんな飄々とした粋なエッセイを書く人物が、割腹自殺を遂げるとは、月並みだが、物凄く残念だし、不思議である。作家の実人生とその作品とは分けて考えるべきなのかも知れないが、考えさせられる。
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読みやすいです |
以前から三島さんの小説は好きで殆ど読んだんですが、これは何か人生の教訓を語ってるかのように感じました。なかなか楽しく読めるので何回も繰り返して読んでます。不道徳を教育すると言うよりは、しっかり常識や道徳を教えてくれる一冊です。


